総合病院から訪問看護へ――キャリアの転機と決断20歳で看護師となり、総合病院で15年間勤務しました。整形外科病棟、オペ室、ICU、外来、循環器病棟と、さまざまな部署を経験し、多くの患者さまと関わりながら幅広い医療技術を学んできました。訪問看護との最初の出会いは、学生時代の実習でした。病院とは異なり、ご自宅での服薬管理や入浴介助などを行う訪問看護の仕事を知り、「病院以外にもこうした支援があるのか」と驚いたことを覚えています。しかし、当時は病院勤務が当たり前と考えていたため、すぐに訪問看護の道に進むことはありませんでした。その後、結婚・出産を経て、子どもの通院や学校行事などに対応しやすい働き方を求めるようになり、訪問看護ステーションでのパート勤務を選びました。1日4時間の勤務だったため、訪問看護に深く関わることはできませんでしたが、病院とは異なるやりがいや魅力を感じるようになりました。オープニングスタッフとしての挑戦――ゼロからの立ち上げを経験して訪問看護の仕事に慣れ始めた頃、勤務先の訪問看護ステーションが閉業することになりました。管理者の退職に伴い、事業の継続が困難になったためです。そのタイミングで現在の三豊店の代表や管理者と出会い、オープニングスタッフとして入職することになりました。事務所の選定や備品の準備、訪問先の開拓など、訪問看護の業務以外にも多くのことに携わりました。特に営業活動は初めての経験でした。前職ではすでに利用者さまがいる状態で入職したため、ゼロから利用者さまを増やすという経験は初めてでした。立ち上げ当初は、営業をしてもすぐに利用者さまが増えるわけではなく、1~2ヶ月間はほとんど依頼がありませんでした。それでも、管理者やスタッフが前向きに取り組む姿勢を見せてくれたことで、気持ちを切らさずに続けることができました。徐々にご依頼が増え、今では訪問件数も着実に増えています。訪問看護のやりがいとは?――ご利用者さまとの関わりが生む感動訪問看護の仕事のやりがいは、ご利用者さまと深く関われることにあります。病院では、看護師が「指導」する立場でしたが、訪問看護では「提案し、一緒に考える」ことが求められます。服薬や生活習慣の改善についても、ご利用者さまやご家族と相談しながら進めていくため、信頼関係が生まれやすいと感じています。特に印象的だったのは、ある利用者さまとのやり取りです。新しいスタッフと同行訪問をした際、その利用者さまから「担当が変わるのかと思った」と言われました。その言葉の裏には、「あなたに担当してもらいたい」という信頼が込められているように感じ、とても嬉しく思いました。また、「あなたが来てくれなかったら施設に入らないといけなかった」「お風呂の介助をしてくれて、本当に助かる」と感謝の言葉を直接いただくこともあります。病院では患者さまとじっくり向き合う時間が限られていましたが、訪問看護では一人ひとりと密に関わることができます。こうした言葉をいただけることが、何よりのやりがいにつながっています。仕事と生活のバランス――訪問看護ならではの働きやすさ訪問看護の大きな魅力の一つは、柔軟な働き方ができることです。病院勤務では、時間の融通がききにくく、半日単位での休みしか取れないことも多くありました。しかし、訪問看護では業務の合間にスケジュールを調整できるため、急な予定が入ったときにも対応しやすいです。例えば、子どもの学校行事や通院などで少し時間を確保したいとき、訪問のスケジュールを調整することで、無理なく対応できます。また、妊婦健診のために業務時間内で抜けられるよう、就業規則がしっかり整えられていることにも驚きました。こうしたサポートがあることで、子育て世代でも安心して働ける環境が整っていると感じています。リーダーとしての挑戦――チームを支え、共に成長するために2025年1月にリーダーに昇格し、チームをまとめる立場となりました。訪問看護は個々のスキルが重要な仕事ですが、チームとしてのサポート体制も不可欠です。それぞれ得意・不得意がある中で、得意な部分は伸ばし、不得意な部分はチームで補える環境を作ることが大切だと考えています。また、新しく入ってくるスタッフがスムーズに馴染めるよう、接点を増やし、適切にサポートしていくことも心がけています。訪問看護の現場は日々変化するため、スタッフ同士の協力が欠かせません。その中で、自分がリーダーとしてどのように貢献できるかを常に模索しています。さらに、今後は精神科や小児の訪問看護にも対応できる体制を整えたいと考えています。病院からの依頼はあるものの、専門的な知識が必要なため、スタッフのスキルアップが課題です。チーム全体で学びながら、より幅広いニーズに応えられるような訪問看護ステーションにしていきたいと思っています。訪問看護を目指す方へ――経験がなくても、寄り添う気持ちがあれば大丈夫訪問看護に興味があるものの、「人と話すのが得意ではない」「病院の経験しかない」と不安に思う人もいるかもしれません。しかし、訪問看護で最も大切なのは、ご利用者さまに寄り添う気持ちです。たとえ話すのが得意でなくても、目的を持って接することで、自然と会話ができるようになります。訪問看護は、病院とは違った形で「寄り添える」仕事です。ご利用者さまの生活に深く関わり、その人らしい生活を支えることができます。少しでも在宅看護に興味がある方は、ぜひ一歩踏み出してみてください。これからも、新しい可能性を模索しながら、訪問看護の魅力を伝えていきたいと思います。