キャリアチェンジのきっかけ|病院から訪問看護へ踏み出すまで私は高校時代、特に明確な夢や目標が定まっていませんでした。ただ、体を動かすことが好きだったこともあり、進路を考える際に祖父から「リハビリの仕事はどう?」と勧められたのが、理学療法士を目指す最初のきっかけでした。その後、専門学校へ進学し、理学療法士としての道を歩むことにしました。卒業後は地元・高知県の民間病院で10年間勤務し、外来・回復期・急性期・通所と、リハビリに関わるほぼすべての部門を経験しました。病院でのリハビリの楽しさや学びの深さに魅力を感じながら、認定運動器理学療法士や介護予防認定理学療法士といった資格も取得しました。しかし、病院での勤務を続ける中で、キャリアの次のステップを考えるようになりました。そのなかで特に、回復期リハビリの将来性に対する不安がありました。入院期間の短縮化が進み、回復期の役割が変化する中で、より生活に根差したリハビリが重要になると考えるようになったのです。加えて、病院の中では年功序列の文化が強く、キャリアアップが難しいという現実もありました。こうした理由から、新しい環境へ踏み出す決意をしました。“生活期リハビリ”の面白さとやりがい――訪問看護で広がる可能性訪問看護の世界に飛び込んでみて、まず実感したのは「自由度の高さ」と「求められる知識の幅広さ」です。病院のように決められた環境ではなく、ご利用者様の自宅に直接訪問するため、一人ひとりの生活に合わせたリハビリが求められます。その分、病院とは違う難しさもあります。例えば、訪問ではリハビリのための設備が整っているわけではないので、その場にあるものを活用しながら効果的なリハビリを提供する工夫が必要です。また、生活期のリハビリでは、理学療法士としての専門知識だけでなく、他職種との連携や接遇のスキルも求められます。それでも、訪問リハビリならではのやりがいは大きいです。病院では回復が見込まれる方を中心に対応していましたが、訪問では「回復が難しい方」の生活を少しでも良くするための支援が求められます。例えば、身体機能の改善だけでなく、生活環境の調整や日常動作の工夫を通じて、ご利用者様が「自分らしい生活」を取り戻すサポートができるのです。そうした成果が見えたときは、何にも代えがたい喜びを感じます。また、看護師との距離感も近く、気軽に相談できる環境が整っています。それぞれの専門性を活かしながら支え合える点は、訪問看護の魅力のひとつです。えん訪問看護を選んだ理由と入社前後のギャップ訪問看護への転職を決めた際、私は「えん訪問看護」一本に絞って応募しました。その理由はいくつかあります。まず、代表が理学療法士である点が大きかったです。リハビリ職に対する理解が深い環境で働きたいと考えていたので、この点は非常に魅力的でした。また、ホームページを見た際に、全国展開を視野に入れたスピード感のある成長を感じたことも決め手の一つでした。さらに、給与面の魅力やキャリアアップのチャンスが多いことも、大きなポイントでした。入社後に感じたギャップとしては、勤務地の変更がありました。最初は高知勤務の予定でしたが、面接の際に「東京でリーダー候補として働いてみないか」と打診され、池袋で働くことになりました。もちろん驚きましたが、キャリアアップのチャンスを考えればプラスになると考え、前向きに受け止めました。結果として、この環境の変化は自分にとって大きな成長の機会になったと感じています。また、病院勤務時代とは異なり、会社の経営面を意識する機会が増えた点もギャップの一つでした。病院では、リハビリの質を向上させることに重点を置いていましたが、訪問看護では「良いサービスを提供すること」と「利益をしっかり確保すること」の両立が求められます。所長として経営に関わるようになったことで、「数字を意識する力」や「事業を俯瞰する視点」が養われました。さらに、リーダーシップの必要性を強く実感しました。訪問看護の現場では、理学療法士・作業療法士・看護師・ケアマネジャーなど、様々な職種の人と連携する必要があります。その中で、リハビリ職としての視点を持ちながら、他職種と円滑に協力できるよう、チームのバランスを取る役割も担うことになりました。病院勤務時代よりも「自ら動いて周りを巻き込む力」が必要になると感じています。所長として感じる働きやすさ・職場の雰囲気とチームづくり現在、東京・池袋事業所の所長として働いていますが、若いスタッフが多く、風通しの良い職場です。訪問看護の業界では堅い雰囲気の職場もありますが、ここでは自由で柔軟な働き方が根付いています。管理者やエリアマネージャーとも距離が近く、相談しやすい環境が整っているのが特徴です。訪問看護は一人での業務が多いため、日々のコミュニケーションを大切にしています。「お礼をきちんと言う」「ポジティブな声かけをする」など、基本的なことを意識することで、信頼関係を築いています。また、看護師とリハビリスタッフの連携も重視し、お互いの専門性を活かしながらご利用者様のケアを行っています。所長として、スタッフが働きやすい環境を整えるだけでなく、事業所の運営も意識しています。訪問件数や稼働率を管理し、効率的な運営を行うことが求められますが、理学療法士としての経験を活かし、PDCAサイクルを回しながら改善を重ねています。訪問看護ならではの直行直帰やスケジュール調整の自由度、副業OKといった働きやすさも魅力です。キャリアアップを目指す方にとって、自由な環境で成長できる職場です。今後のキャリアビジョンと求職者へのメッセージ今後の目標としては、まずは東京の事業所を統括できる立場を目指しています。現在は池袋事業所の所長を務めていますが、今後東京エリアに新しい事業所が増えていく中で、それらを統括する役割を担えるようになりたいと考えています。その先には、エリアマネージャーや本部の役職など、より広い視野で事業を支えるポジションを目指していきたいです。また、理学療法士としての専門性をさらに高めつつ、ビジネス視点を持つセラピストになりたいと考えています。今後、訪問看護の需要はさらに拡大すると予測されますが、それと同時に、理学療法士の数が増え、競争が激しくなることも予想されます。その中で、「本当に必要とされる理学療法士」になるためには、技術力だけでなく、マネジメントスキルや経営感覚も求められる時代になってくるでしょう。そうしたスキルを身につけ、訪問看護の現場で価値を発揮できる存在になりたいと考えています。訪問看護に転職を考えている方に伝えたいのは、「やりたいことが定まっているなら、一歩踏み出す価値がある」ということです。ある程度病院での経験を積んだ後でも遅くはありませんし、訪問看護の世界には病院とは違うやりがいがたくさんあります。特に、生活期リハビリに興味がある方は、訪問看護の現場でしか得られない学びや成長が多くあるはずです。また、転職を考える際には、自分が何を大切にしたいのかを明確にすることが重要だと思います。私の場合は「生活期リハビリに携わりたい」「キャリアアップをしたい」という明確な軸があったため、訪問看護という選択を迷わず決断できました。もし同じような思いを持っている方がいるなら、一歩踏み出してみる価値はあると思います。迷っている方は、まずは一度見学に来てみてください。実際の訪問現場や事業所の雰囲気を肌で感じることで、自分に合っているかどうかが分かると思います。訪問看護の世界に興味を持っている方と、一緒に働ける日を楽しみにしています。